(時事随筆)「ハイブリッド」への期待

 

「ハイブリッド」とは、異種のものの組み合わせ、掛け合わせで出来た新しいモノや生き物のことを言う。動物では「雑種」。イノブタ、レオポン(雄ヒョウと雌ライオンの交配)、ポマト、ハクラン、キャベコンなど動植物にはハイブリッドが沢山ある。もともと、「hybrid」の語源はラテン語の「ヒュブリダ(hybrida)」で、豚とイノシシから生まれた子孫という意味だそうだ。17世紀から、英語のhybridが使われるようになると同時に、生物に限らず、工業製品など色々なモノにもハイブリッドが出てきた。「ハイブリッド・カー(自動車)」は有名であるが、最近、自転車にもハイブリッドが登場した。和歌山市のglafit(株)というベンチュア企業が開発したと最近ニュースで報じられた。

 

これまでの電動自転車いわゆるママチャリは、モーターで人力をアシストするもので、道路交通法上、自転車扱いであるが、glafitバイクは、見た目は自転車、中身はバイクというハイブリッド。遠距離の移動は原付、近距離の移動は足力(自転車)という使い方が出来る。glafitバイクには、一つ問題があって、ペダルだけで走行しても、あくまでも道路交通法上「原付」になるので、歩道が通行できない。自動車は技術の壁、自転車は制度の壁である。

 

これを打破したいと考えたglafit社は、「サンドボックス制度」を利用して、開発に成功した。サンドボックス制度とは、2018年に施行された規制緩和制度であり、以前は、自転車なら認可を取るのに経済産業省、保安基準は国土交通省、道路交通法については警察庁と、役所回りが大変だったが、サンドボックス制度を利用すれば、1つの窓口(内閣官房)で済むことになった。『バイクの電源をオフにし、かつ、ナンバープレートを覆った時は、道交法上、普通自転車として取り扱う』ことになり、ペダルで歩道が走れるようになった。このハイブリッドバイク、速くて快適、お洒落でエコである。郊外からバイクを飛ばして都心に来て、御堂筋や中之島で自転車でチリリンと買い物や散策という使い方ができる。

 

最近、自転車以外にも、ハイブリッドが多く出現してきている。例えば、「ハイブリッド・キャスト」は、インターネットによる情報配信とテレビ放送を組み合わせた新しいサービスであるし、「ハイブリッド・イベント」は、リアル・イベントとバーチャル・イベントを組み合わせた新しい形のイベントである。また、「ハイブリッド・イメージ」は、同じ画像が、遠くからだとマリリン・モンロー、近くからだとアインシュタインに見えるという妙な画像である。

 (注:ハイブリッドイメージ https://tabizine.jp/2015/04/17/35273/ 

 

ところで、コロナ禍やオリンピックにおける日本の対応を見ると、政治混迷を感じる。サンドボックス制度の活用も悪くはないが、いっそ政策は、ハイブリッド官庁(省庁再編)、政治はハイブリッド政党にして、従来の政治スタイルによる閉塞感を一機に打破して欲しいものだ。ただし、ハイブリッド・イメージのような政治は、ご勘弁願いたい。              2021.8  A.M